渋谷区で賃貸経営を行うオーナー向けに、利回りの考え方と改善方法を解説します。表面利回りと実質利回りの違い、東京23区・全国の利回り相場、渋谷区特有の利回りが伸び悩む要因、収入増とコスト削減の両面からの具体的な改善策、賃貸管理会社選びのポイントまでまとめました。
利回りの改善を考えるうえで最初に必要なのは、自分の物件が今どの水準にあるのかを客観的に把握することです。ここでは利回りの基本的な計算方法と、東京23区および全国の相場データを整理します。
不動産経営で用いられる利回りには、主に「表面利回り」と「実質利回り」の2種類があります。
表面利回り(グロス利回り)
年間の満室想定賃料収入 ÷ 物件購入価格 × 100
実質利回り(ネット利回り)
(年間の実収入 − 年間運営経費)÷(物件購入価格 + 購入諸費用)× 100
販売図面や広告に記載されている利回りの多くは表面利回りです。しかし実際に手元へ残る収益を示すのは実質利回りであり、両者には大きな開きが生じます。管理委託料、原状回復費、修繕費、固定資産税・都市計画税、区分所有物件であれば管理費・修繕積立金、入居者募集時の広告料(AD)といった支出がすべて差し引かれるためです。「利回りを改善する」とは、この実質利回りを引き上げることを意味します。
収益物件情報サイト「健美家」が公表した2026年1月~3月期の市場動向レポート(※1)によると、平均表面利回りは以下の水準です。
| 物件種別 | 東京23区 | 全国平均 |
|---|---|---|
| 区分マンション | 5.22% | 6.65% |
| 一棟アパート | 5.65% | 8.06% |
| 一棟マンション | 4.95% | 7.42% |
東京23区の利回りは全国平均を1〜2ポイント以上下回っており、渋谷区を含む都心部はさらにその中でも低い水準に位置します。また、日本不動産研究所の「第54回 不動産投資家調査」(2026年4月現在)では、東京・城南地区の賃貸住宅における投資家の期待利回りはワンルームタイプで3.6%、ファミリータイプで3.7%と報告されています(※2)。都心部では表面利回りの数字そのものを他エリアと比べても意味が薄く、いかに実質利回りを削らずに運用するかが勝負どころになります。
渋谷区は賃貸需要が非常に強いエリアであるにもかかわらず、「思ったほど利回りが上がらない」と感じるオーナーが少なくありません。その背景には、渋谷区特有の構造的な要因があります。
健美家の調査によると、2025年に東京23区で成約したワンルームマンションの平米単価上昇率は渋谷区が前年比24.9%で23区トップとなりました(※3)。渋谷駅周辺の大規模再開発とエリアブランドの強さが価格を押し上げた形です。
利回りは「収入 ÷ 価格」で算出されるため、価格が上がれば利回りは下がります。裏を返せば、資産価値が上がっているのに賃料を据え置いていれば、利回りは下がり続けるということです。長期入居者に対して何年も賃料を改定していない、更新のたびに現状維持で処理している——こうした物件は、市場相場との乖離がそのまま収益の取りこぼしになっています。
渋谷区は単身者やIT・クリエイティブ系の入居者が多く、入退去のサイクルが比較的短い傾向があります。回転が速いこと自体は賃料改定の機会が多いという利点にもなりますが、入退去のたびに原状回復費、クリーニング費、募集広告料(AD)が発生します。空室が1か月延びるだけで年間収入の約8%が失われるため、この積み重ねが実質利回りを大きく押し下げます。
資材価格や人件費の上昇により、原状回復工事や設備交換の単価は上昇傾向にあります。加えて、金利上昇局面では借入金の返済負担も増加します。収入が横ばいのままコストだけが増えれば、実質利回りは自動的に低下します。支出の内訳を把握せずに管理会社任せにしている場合、どこにコストが偏っているのかが見えないまま収益が細っていく状態に陥りがちです。
利回りの改善策は、「収入を増やす」か「支出を減らす」かのいずれかに整理できます。渋谷区の市場特性を踏まえ、実行しやすい順に見ていきます。
もっとも即効性が高いのが賃料の見直しです。渋谷区では再開発の影響が駅直近だけでなく周辺住宅エリアにも波及しており、数年前に設定した賃料が現在の市場水準を下回っているケースが少なくありません。退去のタイミングは賃料を市場水準に合わせ直す絶好の機会です。周辺の成約事例に基づいた査定を行い、募集条件を組み直しましょう。
賃料を引き上げるには、それに見合う価値を提示する必要があります。渋谷区の入居者層に響きやすいのは、高速インターネットの無料提供、宅配ボックス、ワークスペースを意識した間取り、デザイン性の高い内装などです。数十万円規模の投資でも、月額数千円の賃料アップにつながれば数年で回収でき、その後は利回りの純増分となります。また、SOHO利用や法人契約、家具付き(マンスリー)での貸し出しなど、用途の幅を広げることで賃料単価を高められる可能性もあります。
空室期間の短縮は、賃料アップと同等かそれ以上に実質利回りへ効きます。退去予告を受けた時点で募集を開始する、原状回復工事と募集活動を並行させる、繁忙期(1〜3月)に合わせて募集条件を最適化するといった運用の精度が問われます。稼働率を90%から98%へ引き上げるだけで、年間収入は約9%増加します。
管理委託料の相場は月額賃料の3〜5%程度が目安です。手数料の安さだけで判断するのは危険ですが、手数料の範囲外として請求されている追加費用がないか、原状回復工事の見積もりが相場から乖離していないかは定期的に確認すべきです。工事は相見積もりを取る、修繕は突発対応ではなく長期修繕計画に基づいて計画的に実施する——この2点だけでも支出の平準化と削減が期待できます。
ローンを利用している場合、金利は実質利回りに直結します。金利上昇局面では返済額の増加がキャッシュフローを圧迫するため、借り換えや繰上返済、返済期間の再設定を金融機関と相談する価値があります。物件の稼働状況が良好であるほど、有利な条件での借り換え交渉が進めやすくなる点も押さえておきましょう。
渋谷区の区分マンション(1K・購入価格3,700万円)を想定し、賃料の見直しと稼働率の改善を同時に行った場合の変化を試算しました。
| 項目 | 改善前 | 改善後 |
|---|---|---|
| 月額賃料 | 10.0万円 | 10.8万円 |
| 満室想定年収 | 120.0万円 | 129.6万円 |
| 稼働率 | 90% | 98% |
| 実収入 | 108.0万円 | 127.0万円 |
| 年間運営経費 | 53.4万円 | 49.8万円 |
| 年間手取り(NOI) | 54.6万円 | 77.3万円 |
| 表面利回り | 3.24% | 3.50% |
| 実質利回り | 1.48% | 2.09% |
賃料を8%引き上げ、稼働率を8ポイント改善し、入居者の入れ替わりが減ったことで募集広告料が圧縮された結果、年間の手取りは22.7万円増、実質利回りは0.61ポイント改善する計算になります。1件あたりの変化は小さく見えても、保有期間全体で見れば数百万円規模の差となって表れます。
ここまで挙げた改善策のほとんどは、実務を担うのが賃貸管理会社です。つまり利回りの改善余地は、管理会社の提案力と実行力にそのまま依存します。以下の観点で現在の管理体制を点検してみてください。
「相場だとこれくらいです」で終わる説明ではなく、周辺の直近成約事例、競合物件の設備仕様、想定される入居者像を示したうえで賃料を提案できるかが判断基準です。渋谷区は同じ区内でもエリアごとに需要層が大きく異なるため、松濤・広尾と渋谷・恵比寿を同じ物差しで語る管理会社では適正な賃料設定は望めません。
渋谷区に独自の仲介ネットワークを持ち、繁忙期の動きを熟知しているかどうかで成約スピードは変わります。過去の平均空室日数や成約実績を具体的な数字で開示できる管理会社は、実力に裏付けがあると考えてよいでしょう。
原状回復や修繕の見積もりが一式表記になっていないか、管理委託料に含まれる業務範囲が明確かを確認します。内訳を開示し、相見積もりにも応じる姿勢がある管理会社であれば、コスト面の改善余地を一緒に探ることができます。
賃貸住宅管理業法により、管理戸数200戸以上の賃貸住宅管理業者は国土交通大臣への登録が義務付けられ、営業所ごとに業務管理者を配置する必要があります(※4)。登録の有無と業務管理者の配置状況は、管理体制の信頼性を測る客観的な指標のひとつです。
A. 表面利回りの数字だけで判断すると不利に見えますが、渋谷区は空室リスクの低さと資産価値の安定性という別の強みを持っています。地方の高利回り物件は空室が長期化すれば実収入がゼロになりますが、渋谷区は賃貸需要が厚く、稼働率を高く維持しやすいエリアです。加えて再開発による資産価値の上昇が続いており、売却時のキャピタルゲインまで含めた総合的な収益性で評価する視点が必要です。利回りの数字を追うより、実質利回りを着実に積み上げる運用が適しています。
A. 借地借家法により、契約更新時に賃料増額を請求することは可能です。ただし、近隣相場との比較、土地建物価格や公租公課の変動といった客観的な根拠が求められ、入居者の合意が得られなければ最終的には調停や訴訟の手続きが必要になります。実務上は、値上げによる増収と、入居者が退去した場合の空室損・原状回復費・広告料を比較して判断するのが現実的です。設備の更新や共用部の改善とセットで提案し、納得感を持ってもらう進め方が有効といえます。
A. 必ずしも必要ではありません。投資額の回収期間を試算し、賃料アップ分で3〜5年程度に回収できる範囲から着手するのが基本です。渋谷区の入居者層に対しては、インターネット無料化、独立洗面台やモニター付きインターホンの設置、アクセントクロスによる印象改善など、比較的小規模な投資でも成約率と賃料に効果が出やすい傾向があります。大規模改修は、空室が慢性化している場合や築年数が経過し競争力が明確に落ちている場合の選択肢と考えるとよいでしょう。
A. 管理会社の変更そのものが利回りを上げるわけではなく、変更によって「賃料設定」「空室期間」「コスト管理」の3つが改善されるかどうかが本質です。実際に、募集条件の見直しと客付けルートの拡大によって空室期間が短縮したり、賃料が数千円単位で上がったりするケースは珍しくありません。まずは現在の管理会社に改善提案を求め、そのうえで複数社から運用プランと査定を取り寄せて比較することをおすすめします。提案内容を並べることで、現在の運用に何が不足しているのかが明確になります。
渋谷区は物件価格が高く、表面利回りの数字だけを見れば決して魅力的とはいえないエリアです。しかし賃貸需要の厚さと再開発による資産価値の上昇という強い追い風があり、運用次第で実質利回りを着実に押し上げられる市場でもあります。賃料の見直し、空室期間の短縮、コストの適正化——いずれも日々の管理業務の質に左右されるため、パートナー選びが収益を大きく分けます。
以下のページでは、渋谷区の市場特性を熟知し、賃料アップと空室短縮の両面からオーナーの収益改善を提案できる賃貸管理会社を紹介しています。所有物件の利回りを見直したい方は、あわせてご覧ください。
TonTon※:2025年08月時点・参照元:TonTon公式HP(https://tonton-inc.com/news/notice/3920)
日本財託(※1)2026年1月末時点の販売分入居率・参照元:日本財託公式HP(https://www.nihonzaitaku.co.jp/kanri/)
(※2)2026年2月5日調査時点・参照元:日本財託公式HP(https://www.nihonzaitaku.co.jp/kanri/service/knowhow/)
(※3)2026年2月5日調査時点・参照元:日本財託公式HP(https://www.nihonzaitaku.co.jp/kanri/service/resident/guarantee/)