「非弁行為」とは、弁護士法第72条に記された行為を行うことを指します。ここには、「訴訟代理」や「和解交渉」「契約書作成」「立ち退き交渉」などが含まれています。このような行為を弁護士以外が行うことは禁止されていて、違反した場合には2年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます。
弁護士法には、下記のように規定されています。
「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。」(弁護士法72条)
引用元:e-GOV法令検索「弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)」(https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC1000000205)
賃貸管理会社では、賃貸請求や家賃の滞納に対する督促、原状回復交渉、賃料改定の交渉など、さまざまな法律事務を扱っています。しかし、どこまでが非弁行為に該当するかについては判断が難しいケースも多いです。ここでは、具体的に問題になりやすい業務を解説していきます。
入居者が家賃の支払いを滞納した場合には、管理会社がオーナーの代わりに賃料の督促を行うケースがありますが、督促業務は程度により非弁行為として違法になる可能性があるので注意が必要です。
督促を行う場合、単に請求書の送付や、電話連絡は非弁行為に該当しにくいですが、借主と家賃支払いに関する交渉を行う、和解案を提示するといった行為は非弁行為に該当する恐れがあります。
入居者が家賃を滞納し続ける場合、オーナーは賃貸借契約を解除し、該当の建物からの立ち退きを求めることができます。しかし、管理会社がオーナーの代わりに訴状を作成して裁判所に提出する行為や、借主と立ち退き交渉を行うことは非弁行為とみなされます。 立ち退きの事案について管理会社に許される行為は、オーナーと入居者間での書類の取次や連絡の取り継ぎ、実際に立ち退きを行う際の立ち会いなどに限定され、立ち退き事案に関連して、管理会社がこれ以上のことをおこなうと非弁行為に該当する可能性があります。
管理業務を行っている管理会社においては、オーナーに代わって賃借人との間で賃料交渉を行うケースがあります。その中では、オーナーの賃料を増額の意向を賃借人に伝える行為のみであれば問題はない場合が多いです。しかし、管理会社が賃料額について交渉を実質的に行った場合には、非弁行為に該当する可能性があります。
非弁行為の例外として、司法書士または行政書士に認められている行為があります。下記のように、一定の範囲内で法律に関する業務を行うことが認められています。
司法書士、行政書士でも定められた範囲を超えた法律業務を行うと非弁行為となりますので注意が必要です。
また、自社社員が自社の法律業務を行うことや法律トラブルの解決を無報酬でサポートすることは非弁行為となりません。
法律分野でも、AIを活用したサービスの利用や業務効率化を行うことが増えています。法律(リーガル)と技術(テクノロジー)を組み合わせたリーガルテックと呼ばれる造語もあり、電子契約や文書・書面管理、契約書などの文書作成、紛争解決サポートなど様々な場面に導入されています。その中で、本来弁護士が行わなければいけない契約書チェックをAIが行うことは非弁行為にあたる恐れがあるとしてグレーゾーン扱いになっていました。
しかし、令和5年8月1日に発表された法務省にガイドラインによって、AIを用いる契約書の作成、審査などの一部自動化支援サービスの利用は、次の3つの条件をすべて満たさなければ違反しないと考えられると示されました。
参照:非弁問題の現状と対策(https://www.moj.go.jp/content/001400675.pdf)
土地建物の売買を営んでいる被告人がビルオーナーからの依頼で報酬を得る目的で賃借人と交渉して立ち退きを迫った際、不安や不快感を与える振る舞いをしたことが弁護士法72条違反に該当すると判断された平成22年7月20日の最高裁判決事例です。法的紛議が起こることを避けられない明渡交渉は、弁護士の業務となります。
この判例により、現在では賃借人の意思に反して明渡交渉を行う不動産業者は少なくなっています。
非弁行為は、国民に不利益が起こる恐れがあるので法律で禁止されています。具体的には、専門知識を持たない人が法律知識の足りない状態で間違った法的対応を行う、適切な解決ができずにかえってトラブルを大きくしてしまうなどのリスクが挙げられます。
また、弁護士がいない状態で過大な報酬を請求される、損害が生じても賠償責任保険制度がなく十分な補償が受けられないなどの恐れがあることなども問題となっています。正当に行使できるはずの権利があるのに、非弁行為によって権利行使ができない状態になるなどの被害者が出ることを防ぐため、弁護士以外が法律事務所をおこなうことを規制して依頼者を守り、社会的な混乱や不正取引を防いでいます。
管理会社の非弁行為を防ぐには、まず契約内容を明確化することが重要です。具体的には、管理委託契約書に、管理会社の業務範囲と非弁行為禁止条項を明記します。さらに、法律行為が必要な場合には、弁護士に委託する、という旨を盛り込んでおきます。
法律問題は専門家に依頼すること徹底することが重要です。例えば賃料の滞納が長期化している場合や、立ち退きが必要となる場合には弁護士に速やかに相談して、管理会社に法律業務を行わせないような体制をあらかじめ整えておくことが重要です。
そして非弁行為を未然に防ぐには、管理会社の実績や体制を確認して、法務体制が整った信頼できる管理会社を選定しておくことも大切です。
こちらの記事では、賃貸管理における非弁行為について解説してきました。賃貸管理を委託する中で、管理会社が非弁行為に該当する行為を無意識に行ってしまう可能性はゼロではありません。このような状況を防ぐためにも、オーナーは管理会社が担当する業務範囲について正しく理解した上で、法律行為は弁護士に依頼する体制を整えておくことが、物件の安定運用とトラブルの防止につながります。もし、現在委託している管理会社に対して不満がある場合には、非弁行為に関するリスク管理も含め、管理体制の見直しを検討してください。
当メディアでは、渋谷区で物件をお持ちのオーナーに向けて、目的別におすすめの賃貸管理会社を紹介しています。各社の特徴やサービス内容を詳しく解説していますので、参考にしてみてください。
※参照元:TonTon公式HP (https://tonton-inc.com/business/management)
※参照元:ルーム・スタイル公式HP|賃貸管理手数料の相場は?金額に幅がある理由と損しないための注意点 (https://roomstyle.co.jp/media/rentalmanagementfee#1-1_5)